脳イキ

第二章「問題点」

1 女性の性行為中における心理状態

第1章までで​女性のオーガズム不全の要因もしくは不感症の要因は心理的要因がほとんどである​事が分かっていただけると思い ます。
では、女性は性行為中にどのような心理状態にあるのかを、ここでは見ていきたいと思います。

快楽の度合いを大きく左右するのは​「興奮」​であるということはお話しし ましたが、この興奮の阻害要因になっている心理状態にはどのようなものがあるかという点で見ていきます。

(A).不安 (B).羞恥

これについてはよく似ていることなので同列に説明をしていきます。

女性がセックスの時に感じる具体的な不安や羞恥は「(性的好奇心が旺盛な 自分は)引かれないかな」というものだったり「顔や体を見られることが恥ずかしい」というものだったりします。


女性はほぼ全員と言っても過言ではないくらいに、自分の容姿にコンプ レックスを持っています。

対して男性はどうでしょう?

おそらく「モテるために」とか何かを目的に容姿を向上させることはあっ ても、自己否定的に自分の容姿を捉えている人というのは少ない気がします(もしいたらすみません。)
社会的に女性の価値として「容姿がいい事」の優先順位が高いこともありますが、女性は男性が思っている以上に容姿にコンプレックスを強く持っています。

思春期に言われた「ブス」という言葉を何十年も引きずっている人も少なくありません。


僕たち男性はセックスの時に、お腹が出ていることや気持ちいい時に歪む顔だったりを気にして「自分の気持ち(興奮)が萎縮する」という経験をした事がない人がほとんどだと思います。

女性の大部分はこうした中でセックスをしています。

(C). 罪悪感

これについては、ほぼ教育の成果だろうなと思いますが「セクシャルなこと=ダメなこと」 という価値観というのは確実に社会のマジョリティとして存在しています。

犯罪者の割合を見ても女性は「ダメだとされていること」に対して男性に比べると臆病な傾向にあります。

僕はなにもこの「セクシャルなこと=ダメなこと」という価値観が害悪なものだとは思いません。

こういった価値観が自分の中にも少なからずあるからこそ興奮できる側面はあるからです。

不安や羞恥と違って、男性にも女性にもこういった価値観があるにもかかわらず、なぜ男性と女性の間でセックスの時の興奮度に差ができてしまうのかというと僕は切り替え能力の差ではないかと思います。

男性は普段社会生活を送っている中では原則その価値観に従い生活をしていますが、セックスをするとなったときに「その価値観をそこで用いる必 要が無い」という認識になり罪の意識を感じることはほぼありません。

対て女性はそのTPOの使い分けが苦手なのです。

また罪悪感という点では、社会的価値観以外にも「興奮したり本能的に なったりしている『いつもと異なる自分』を許容できない」というものも あると思います。

これは男性にも大いにあるものです。

例えば僕は小学生の時にオナニーを覚えましたが、好きな女の子の写真を見ながらオナニーをしていて、射精をした後になんとも言えない虚無感や 「死にたい」みたいな気持ちによくなりました。

これは射精直前まで猛烈に高ぶっていた自分を、射精直後の冷静な自分が受け入れきれないといった心理状態なのではないかと思います。

ちなみに女性はこの「正常ではない自分」を許容できない度合いが強く、 僕たち男性と違ってオーガズムを得る前に虚無感や冷静さを取り戻してしまう人もいます。

僕のところに来るお客さんの中で1割程度ですが「オナニーでもイッた事がない」という人がいますが、この場合が多いです。

男性の場合はこの「正常ではない自分を許容できない」という側面がオー ガズムを阻害することは少なく、それゆえに何度もオナニーやセックスでオーガズムを経験していくうちに「正常ではない自分」に慣れていきます。

女性は「正常ではない自分」に到達する前に正常な自分に戻ってしまうので、慣れることなく同じように「興奮しては戻る」というサイクルを繰り返してしまうのです。

(D). 他者優先

これはほとんどすべての女性に当てはまり、なおかつ社会的に正義とされている事柄です。

セックスの時に「相手を思いやる」という気持ちで、女性の多くは「相手の男性に気持ちよくなってもらうこと」を第一義的にセックスをしています。

逆に男性は「自分が気持ちよくなること」を第一義的にセックスをします。

もちろん男性の中にも「女性に気持ちよくなってもらいたい」と思う方はいますが、そういった方々も「女性が気持ちよくなっているところを見て自分が興奮する(自分が気持ちよくなる)」という事が目的です。

つまり男性のそれは自分の興奮のためのオマケみたいなもので、女性のそれとは目的が異なるわけです。

逆に女性は「自分が気持ちよくなる事」と「相手に気持ちよくなってもらう事」は並列的にあり、優先すべきは「相手」と「自分」となってい ます。

ただでさえ「理性」という点で興奮する事が苦手な女性は、男性を思いやるという社会的正義を貫くあまりさらに興奮できないでセックスをして いるのです。

こうした性行為中における女性の心理状態を見ていくと男性にはあまり無いものばかりであると思います。

それゆえに男性はセックスの時になんなくオーガズムを得る事ができ、女性のほとんどがオーガズム不全になっているのです。

また、遅漏で困っているという方がいらっしゃっ たら、上記のどれかに当てはまっていると思います。

女性のオーガズム不全を改善する方法と同様の方法で遅漏も改善すること ができる場合が多いので参考にしてみて下さい。

2 興奮を阻害する心理要因からくる逃避行動

1で説明した心理的要因によって多くの女性は「逃避」という行動に出ます。

この「逃避」について説明をしていきます。

「逃避」に関しては大きく分けて3つあるので以下項目を分けて説明しま す。

(A).誤魔化す

この逃避の方法が一番多いと思います。

これは何も女性に限った事ではなくて男性にもよくあることですが、 簡単に言うと「照れ笑い」などがこれに当たります。

興奮を阻害する心理要因として「羞恥」というものを上げましたが、何度も言うように女性は男性の想像もつかないレベルで「恥ずかしい」と感じ ます。

セックスの時にパンツを脱がせただけで陰部を隠す動作をするのは女性だ けですよね?

厳密にいうと羞恥は実は興奮の阻害要因ではありません。 羞恥を誤魔化して笑いに逃避したり下記「開き直る」に逃避したりするこ とが興奮の阻害要因になります。

「恥ずかしい」という気持ちは、心理的に不安定なものなので安定に向か おうと「笑い」に持っていこうとするのです。

しかし、そもそもセックスで快楽を感じることは、前述したように大脳皮質の活動の非活性化に他ならないのであって「気持ちよくなること」と「心理的不安定さ」は切っても切り離すことができません。

心理的な不安定と向き合うことが大切といえます。
ちなみにこれはセックスの時に男性もやりがちなことです。

自分の性的興奮の高まりを「みっともない」「恥ずかしい」と捉え、誤魔化してしまう人は多いです。

ただ男性は、これが興奮の阻害要因になっても、最終的には恥ずかしくなくなりオーガズムを得る事ができます。
とはいえ、男性が自分の羞恥を誤魔化すことで女性が逃避をしやすくなるといった側面もあります。

ここはとても重要で下記(男性の役割の項)で お話しますが、女性の逃避を防ぐ方法は、男性が逃避をしない事が必要条件になってきます。

(B).開き直る

これは(A).に比べると一般的ではありませんがよく見られるものです。

例えば女性に足を開かせるとします。

そうしたときに女性の多くは「恥ずかしい」と感じます(当然ですが)。

その羞恥から逃避するにあたって、例えば産婦人科で検診を受けるモード になったり、性風俗で働いているような方であれば仕事のモードになった りします。

どちらかというとこの「開き直る」という逃避の方法は、自分の羞恥とい う心理状態を無視してしまうやり方なのかもしれません。

(C).余計なことを考える

この「逃避」の仕方は、ほとんどの女性が経験をしていると思います。

オーガズム不全の女性はよくセックスの途中で「今日の夕飯の事」を考えたり「家の戸締りの事」を考えたりします。

こうして集中力を散漫にすることで自分の羞恥や不安から逃避をするのです。
ちなみに女性はすべての「逃避」を自分でしていますが、意識的にしているかといえばそうではないです。

自覚があるというわけではありませんが「なぜイけないと思う?」という質問の答えに「余計なことを考えてしまうんです」という女性は多いです。

つまり「気持ちよくなりたい」「おかしくなりたい」と思っている自覚はあるのに、反対方向に思考してしまっているといった状態なのです。

これが厄介なのは、この「余計なことを考えてしまう事」を「やめないと」と思って、さらに余計な事を考えてしまうという点です。

図におけるcase.1の状態の人は、case.2に憧れます。

それゆえにcase.3の 過程を「余計なことを考えないようにする」という思考でもって歩もうと します。

僕は「余計な事」は無くそうとしなくていいと思っています。

「結果として、余計なことを考えなくなった」というものが導かれればいいので、単純に「欲求」や「感覚」にフォーカスをしていけば、おのずと 「余計な事」は消失するのです。

3 女性の心理要因の解消方法

これまで女性の性行為中における心理要因を見てきましたが、それを解消するためにどのような方向性で働きかけをしていけばいいのかを大まかに考えていきます。

これには大きく分けて2つの段階があります。

以下に記します。

(A).認知(自覚)

そもそも自分の中にそういった心理要因があることを自覚していない場合には、この段階から始める必要があります。

何を認知する必要があるのかというと、興奮の阻害要因になっている心理に隠された欲求を自覚する事が必要になります。

例えば「恥ずかしい」という理由で「(何かを)しない」という選択をする人がいます。

この「恥ずかしい」という心理の下になにが隠されてい るのかを考えます。

仮に「セックスがしたい」という欲求を抱えている人が「恥ずかしい」と いう理由で「しない」という選択をしているとしたら、この人が満たされる方法は「する」という選択をする事です。

欲求にしたがい選択をすることが原則「満足」をもたらします。

しかしこ の場合の多くは「したい」という欲求を自覚していません。

「しない」という選択に対して逆算で「なぜ」と問うと「恥ずかしい」は 出ますが、「したいんだけど」という欲求までは自覚していないのです。

この「しない」という選択のもとになる欲求はなにも「したい」だけでは ありません。 当然「したくない」という欲求がある場合もあります。

「したくない」→「伝えるのが怖い(不安)」→「恥ずかしいと言えば角が 立たない」→「しない」選択の場合もあります。

ただこの場合を考えると雑多になってしまうので、皆さんが相手する女性が皆さんと「したい」と思っていることを前提にお話します。

阻害要因になる心理に関しては自覚している女性が多いので、その次に行う事は「恥ずかしい」「不安」「ダメなことだから」のあとに「でも、したいんだよね」ということを自覚してもらうのです。

自覚してもらう方法は「一旦やらない」という方法をとります。

セックスの例で言えば「しない」という選択をした女性に「じゃあしないね。」という結論を一度提示します。

その後「しないという結論を出したときにどう感じたか」を問います。

もし、その女性が「したい」という欲求を抱えていたとしたら「がっかりした」「残念に思った」という感覚が脳に残っているはずなので、そこを導いていきます。

これが「安心した」「ほっとした」という感覚なのであれば、「したくない」という欲求を抱えていた可能性があります。

こうして「抱えている事を認めにくい欲求」を自覚させることで、その実現の妨げになっている阻害要因を解消していくことになります。(詳しくは第三章にて)

(B).受容

自分の欲求を認知できていない人は、その欲求を自己否定している場合が多くあります。
自己否定している理由については、1の項を参照してください。

前項で見えなくなっている欲求を逆算して自覚させるという方法をとりま したが、これだけではその欲求を自己否定したままなので阻害要因は取り除かれていません。

この阻害要因を取り除くことで欲求の高まり(つまり興奮)が阻害される事なく進むことになります。